ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

小学生

当時の音

レコードで「出来るなら当時の音を聴きたい」と、モノラル用カートリッジを購入するという、とあるブログを読んで。 私が7歳の時、我が家にようやく白黒だがテレビが来た。兄が友人からもらったものだが、それまでテレビは何かの集まりにでも行かない限り見…

バイバ~イ

平日、15時頃に列車に乗る 3駅過ぎたところで かっこいいランドセルを背負った 大勢の小学生が乗り込んでくる 閑散としていた車内が一気に賑やかになった マスクをしていてもおしゃべりは止まらない 「○○ちゃ~ん、バイバ~イ!」と 降りていくクラスメイト…

わたしのせい

狭い通路で前から話しながら歩いてくる二人がいる。私とすれ違う方の人が大声でしきりに話しているから、おそらく私に気づいてはいてもぶつかってくるような気がしたので、早めに衝突を回避するために体を横にして立ち止まって壁際に待機した。しかし、結局…

間に合わなかった似顔絵選手権

私がすぐに描きこんで使い切ってしまうからか、落書き帳は、なかなか買ってもらえなかった。しかたなく聖教新聞の折り込みチラシを毎日チェックする。片面刷りのチラシの裏は落書きにはもってこいだった。 絵には鉛筆ではなく筆を使っていた。今でも筆先のぐ…

サクラ サクラ

夜、向かいの団地に住んでいるおばちゃんが母を誘いに来る。母が連日出かけたのは、一週間くらいだろうか。どこにでもついて行きたがる私は、おばちゃんを味方につけて、ついて行ったことがある。 スーパーの2階にある広いイベントスペースに着くと、既にた…

コーヒーの味

母が持ち手の付いた陶器のカップを三つ買ってきた。それまで使用してきたのはプラスチック製のカップか、陶器だと『ミクロイドS』の湯飲みだった。 カップは三つ。こげ茶でヨーロッパの街並みが細かく描かれているものと、その色違いの白バージョン、もう一…

熟し柿

10月に入るとスーパーの果物コーナーに柿が並ぶ。柿の前は葡萄や梨に夢中だったのに柿が出ると迷わず柿。5、6個入っている袋を二つは買う。柿は熟して柔らかくなったほうが好き。 母が熟し柿を買ってくるようにとよくお使いに行かされた。産地直送なのか駅か…

屋台のラーメン

夜9時頃、チャルメラが聞こえてくると兄がラーメンを欲しがる。兄が母を説き伏せてやっと手に入れたものを私はよく便乗していた。そのためパシリにはよく使われる。急いで軽トラの屋台を追いかける。全力で追いかけていると誰かに追われていると勘違いされて…

幼馴染と豪雨

年賀状で今年こそ会おうねと書くが、もう20年以上会っていない友人がいる。小学校からの旧友だ。誰かの紹介だったか、色白で小川範子のような清楚な感じの彼女を一目で気に入ると、それからは『ちびまる子ちゃん』のまるちゃんとたまちゃんみたいに行動を共…

天井に野菜炒め

土曜日は午前中だけの授業が終わるとうきうきしながら帰る。翌日学校が休みというだけでなく大好きな『8時だョ!全員集合』があるからだ。一番好きだったのが、怖いけどついつい見入ってしまう怪談もの。後ろにいるお化けに気づかせようと「志村うしろ!」と…

情操教育

兄が漫画本を集めだすまで我が家にあった本といえば、青いハードカバーのイソップ童話集、カラー写真の料理本、編み物の本、それから一度だけ家族で観に行った映画の原作『積み木くずし』の四冊くらいだろうか。『積み木くずし』は暴力を振るうようになった…

待つこと

三越の屋上の長椅子に何時間も座っている 音楽も聴かない、本も読まない母は ずっと煙草を吸っているだけだった その間、兄と私はゲームセンターで遊んでいる 私は母が退屈していないか心配になると 時々戻ってきては母の傍にいようと長椅子に座った 母は遊…

年末

我が家では12月は襖の張り替えをしていた。四畳半の部屋で兄と走り回って遊んだりしていると一年で襖はボロボロになる。母は使わなくなったジャポニカ学習帳やぬりえの表紙の厚紙を襖の補強に利用して上手に張り替えていた。使えるものはなんでも使っていた…

栄養と歯

母に連れて行かれた歯科医院は四角い白いコンクリートの殺風景な建物だった。何をされるのかわからない怖さで足がすくみ、病院までの長い道のりをのろのろと歩いていると早く歩くようにと母に急かされる。 治療後、医師が「お母さん、娘さんの歯は溶けるよう…

我が家のお出かけ

家族で出かけた思い出は泊りがけは一度もないが、遠出の日帰りは二回あった。一つは須磨に泳ぎに行ったこと、もう一つは団地の母の日の催しで「カーネーション旅行」という名の日帰りバス旅行で、まだ母が団地の人と普通に会話ができていたから、私が小学校…

兄の思い

母は兄にはお小遣いをあげていたようで、大量のガンプラ、エアガン、漫画が我が家にはあった。しかしテレビ、電話、エアコン、給湯器は我が家にはなかった。 欲しいものがほぼない私とは違い、低学年から高学年になるにつれて兄は他の家にあって我が家にない…

幼げのいたり

母は夜ご飯以外、用意することはあまりなかったので、兄と私はいつも適当にご飯を食べていた。ある日、冷蔵庫に何もなくて、ふりかけもない時、兄は「おかんを起こして出前を取らせよう」といい、いつものようにパンイチに近い服装でごろ寝している母の足の…

これまで生きてて息ができないほど笑ったこと

手が離せないからハサミを早くちょうだいと隣の部屋にいる兄に頼んだら、 隣の部屋からハサミが飛んできて、私の指をかすめて畳に斜めに刺さる。 兄が「早く」ではなく「速く」という意味の冗談で投げてきたのが、 危なすぎて腹がよじれるくらい笑った。 こ…

仏壇の中から

団地ではとある宗教団体の座談会が定期的にあり、幼い頃は家族三人で参加していた。私はおやつ目当てによくついて行く。母は仏壇に手を合わせて熱心に念仏を唱えている時期があった。私も真似をして念仏を唱える。 仏壇は団体から買ったのか借りているのかよ…

冷ややっこ

我が家のおかずは常に一品だ。 母の買い物にはよくついて行った。母は複雑な料理をあまりしないから買い物も簡単だ。豆腐屋に行くと木綿豆腐を三丁買ってそれで買い物は終わる。 沈んでいる豆腐をふわりとすくい上げて水の中で手のひらに乗せると、包丁の刃…

温かい傷痕

フェルトでアップリケを作ったり、刺繍糸でフェルトに文字や絵を描いたりして、ブックカバーや小物入れなど好きな物を作る家庭科の授業があった。 上手に作っている子の作品は見本に先生が高く掲げて紹介してくれる。私も頑張ろうと作業に集中していたら、う…

侮るなかれ

運動会の練習で直角に曲がらないといけないところを近道で真っ直ぐいこうとしたら担任に腕を掴まれて、舌打ちのようなうなり声とともに強引に行進の列に戻されたことがあった。私は集中力がなくて、やりたいと思ったら後先考えないで行動するタイプだった。…

晩ごはん

高学年になると母から毎日千円をもらって買い物に行き、夕食を作るようになる。 母は徐々に家事をしなくなった。 ランドセルを背負い夕食のおかずを考えながら帰宅する。これといって料理を教えてもらったこともないので何をしたらいいのかわからない。家に…

ギブミーチョコレート

友人の父親とそのお兄さんはパチンコが大好きだった。今はもっと最新になっていると思うが、当時のパチンコ台は一発ずつ手で弾いていた。二人がパチンコをする数時間の間、友人は駐車場で待たされる。暇つぶし相手として、週末になると時々友人が「おとんと…

須磨

昨日、満中陰志のカタログギフトで選んだ神戸ディナークルーズに行った。ディナーまで「須磨水族館」を楽しむ。 水族館の中に懐かしの綿あめ製造機があった 須磨は家族で海に来た唯一の思い出の地である。遠出をあまりしない母が駅員に乗り換えを確認してい…

白菜の味噌汁

我が家のおかずは常に一品だ。 お吸い物のように透き通った味噌汁のみの時は具材の味一つ一つがはっきりとわかった。私は具材よりも汁が好きで最後はご飯にかけて食べていた。 初めて友人宅の夕飯を見ることがあった。隣の団地で祖父母と一緒に住む友人はお…

今があること①

今週のお題「夏を振り返る」母の初盆のお線香をあげた後、兄から母が施設で作っていたというビーズアクセサリーをもらう。器用に上手に作られていた。母が手縫いで自分のエプロンを作っていたのを思い出す。編み物もしていた。料理よりも手芸が好きだったよ…

おんぶ

母は昔、自転車で怖い目にあったらしく、自転車は乗らない。家の近くにバス停も駅もない。生活圏は1時間くらい歩いて行けるところが中心だった。病気になると病院までの遠い道のりを徒歩で通う。 7歳の時だったか、体中が痛くて歩くこともできない病気になっ…

立膝

小学校低学年までは週に1、2回のペースで母と一緒に銭湯に通っていた。しかしいつの間にか母は一年に一度くらいしか風呂に入らなくなった。久々の銭湯に行くと何時間もかけて垢を落とす。銭湯に迷惑がかかっていないか心配するほど肌の色が白くなって帰って…

風の又三郎

コの字型に建てられた団地の真ん中に公園がある。その公園で遊んでいると窓から子どもの様子を見ることができるため、母親が「お昼だよ~」と声も掛けやすい。クラスメイトとよく遊んだ公園だ。いつものようにクラスメイトと公園で待ち合わせすると、私は玄…