ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

熟し柿

 

10月に入るとスーパーの果物コーナーに柿が並ぶ。柿の前は葡萄や梨に夢中だったのに柿が出ると迷わず柿。5、6個入っている袋を二つは買う。柿は熟して柔らかくなったほうが好き。

 

母が熟し柿を買ってくるようにとよくお使いに行かされた。産地直送なのか駅から少し離れた空き地にテントを張って、野菜や果物を売りに来ている人たちがいる。大きな声が遠くまで聞こえるほど毎日活気にあふれていて、我が家ではそこを「テント」と呼んでいた。熟し柿は山盛りのバケツで売られている。値段は10円。あんなにおいしいのに10円って不思議だった。重いので自転車の前かごに入れてそおっと持ち帰る。柿の形がこれ以上崩れないように気をつけた。

 

手で皮を剥くと熟して指の間から落ちかける果肉にかぶりつく。種になりかけた部分と種の回りのゼリー状の部分だけがこりこりしていて、ほとんど啜って食べられる。母と兄も私と同じように手と口をべとべとにしていた。子どもの頃、おいしいおいしいと一緒に食べていた兄は、大きくなると食べなくなる。熟し柿を買うことも恥ずかしがるようになった。でも私は今でも柔らかい柿が大好き。

 

 一日一つは食べているので、ひと冬で百個以上食べていることになる。