ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

家族

当時の音

レコードで「出来るなら当時の音を聴きたい」と、モノラル用カートリッジを購入するという、とあるブログを読んで。 私が7歳の時、我が家にようやく白黒だがテレビが来た。兄が友人からもらったものだが、それまでテレビは何かの集まりにでも行かない限り見…

贅沢な休日

仕事の朝はホットミルクティーとオレンジジュースをゆっくり飲みながら、撮りためていたアニメや中国ドラマを観る。飲み物のお供にはパンがいい。休日の朝はホットオレにする。今日はホットオレの日、しかしパンが無いことに気づく。 まあまあ、そんなことも…

振り返ると

亡くなってから初めて一個人が気になった。それまで私は「母」しか知らない。親戚付き合いもほぼなかった我が家に、私が知る母ではない母を語ってくれる人はいない。実家を片づける時、もう使われてはいなかったが、しっかりと固定しているたくさんのケーブ…

三本の糸

今週のお題「大人になったなと感じるとき」 幼い頃、兄は毎日悪夢にうなされていた。自分の置かれている立場を意識し始めて、頼りない母と私を抱えて生きていくことのストレスを就学前からすでにもっていた。 兄がうなされているのを母と私が気づいて起こす…

コーヒーの味

母が持ち手の付いた陶器のカップを三つ買ってきた。それまで使用してきたのはプラスチック製のカップか、陶器だと『ミクロイドS』の湯飲みだった。 カップは三つ。こげ茶でヨーロッパの街並みが細かく描かれているものと、その色違いの白バージョン、もう一…

冬の贈り物

クリスマスプレゼントは、義姉さんにはボタンにかぶせて使ったり、チェーンを付けてネックレスとしても使えるアクセサリーを、姪にはビジューのかわいいストッキング3組とミニオルゴール、甥にはかっこいいフードウォーマー。それと、いつもの図書カードとマ…

先にいる人

家族三人で遊園地に行く。兄はお気に入りのキャップ、私は母が結ってくれたツインテール。母は大きな声を出して、笑って写真を撮ってくれる。家族で出かけたのは小学校低学年くらいまでだった。 生活保護を受け始めてから、母はいつも家にいた。そして「お母…

ふわふわ

敷き毛布のふわふわの手触りを楽しむ季節 ふと柔らかいものをなぜ柔らかく感じるのか それが気持ちいいと思うのか そして安心するのかを少し考えてみた ふわふわを触り続けていると ふわふわが私か、私がふわふわか 自分の感覚を持って行かれるような ふわふ…

教わったもの

思い返せば、私は母から何を教わったのだろう 口下手で無口な母は説教をしない 教わったというよりも 空気のような掴むことができないものに 全身全霊で合わせること 我慢のようなものを学んでいた気がする 母は我慢ばかりしている人だったから 亡くなってか…

熟し柿

10月に入るとスーパーの果物コーナーに柿が並ぶ。柿の前は葡萄や梨に夢中だったのに柿が出ると迷わず柿。5、6個入っている袋を二つは買う。柿は熟して柔らかくなったほうが好き。 母が熟し柿を買ってくるようにとよくお使いに行かされた。産地直送なのか駅か…

おじいちゃん

三年前に亡くなった四国の祖父は70歳くらいから盲目になったが93歳まで生きた。初めて会ったのは親戚の結婚式。新郎と新婦が祖父にピアノの演奏をプレゼントすると「ありがとう!」と大きな優しい声が会場に響いた。この日、結婚して日の浅い私は、初対面で…

眩しい光景

2016年、お義母さんに肺がんが見つかる。冬に咳が続いて風邪にしては長引いていると思い、何気に帰省先の病院を受診する。レントゲンで肺がんの可能性を言われ、帰宅後、大きな病院での精密検査をした。今後の治療方法の説明日、彼は仕事で出席できないとい…

屋台のラーメン

夜9時頃、チャルメラが聞こえてくると兄がラーメンを欲しがる。兄が母を説き伏せてやっと手に入れたものを私はよく便乗していた。そのためパシリにはよく使われる。急いで軽トラの屋台を追いかける。全力で追いかけていると誰かに追われていると勘違いされて…

いつまでもわからないこと

長い間、一人暮らしを楽しんでいた。なぜか一度も自分の人生に結婚という未来を考えたことはなかった。可愛いお嫁さんになると言ってたクラスメイトがたくさんいても、次々に結婚していく友人がいても、自分もいつかはなどとは考えたこともない。 彼とは大学…

我がまま

兄は流行りの合体ロボ、ブリキのサンダーバード2号、プラレール、大量のガンプラ、ワルサーP38、44マグナムのモデルガンを持っていた。私の不注意でプラモデルを棚から落下させてしまいビームサーベルを折ってしまったことがある。いつまでも愚痴を言われた…

ひょうきん者がいい

事実をありのまま話しているだけでも人は傷つく。私は歯に衣着せぬ物言いだから結構きついほうだが、ひょうきんなキャラクターのせいか大事に至ったことがない。話し方や態度は安心できる身近な人を無意識に真似たりしているのか、家族の影響が大きいようだ…

情操教育

兄が漫画本を集めだすまで我が家にあった本といえば、青いハードカバーのイソップ童話集、カラー写真の料理本、編み物の本、それから一度だけ家族で観に行った映画の原作『積み木くずし』の四冊くらいだろうか。『積み木くずし』は暴力を振るうようになった…

反面教師で学んだもの②

初めての職種に挑戦すると大体空回りしていた。特に若い頃は仕事に対して勝手なイメージが強く、そのギャップに戸惑い仕事を自分のものにすることが遅れた。この勝手なイメージがあったからやりたい意欲は出たが、実際にやり続けていくには覚悟や勇気といっ…

2年前のダンナの母方の祖父の葬儀で初めて自分の墓を考えた。結婚している実感が未だにないのに墓を考えると実感が湧く。何も考えずによく結婚できたなと思うことが多い。何も知らなかったからできたような気もする。ブログと一緒で。 老人ホームにいた母に…

待つこと

三越の屋上の長椅子に何時間も座っている 音楽も聴かない、本も読まない母は ずっと煙草を吸っているだけだった その間、兄と私はゲームセンターで遊んでいる 私は母が退屈していないか心配になると 時々戻ってきては母の傍にいようと長椅子に座った 母は遊…

年末

我が家では12月は襖の張り替えをしていた。四畳半の部屋で兄と走り回って遊んだりしていると一年で襖はボロボロになる。母は使わなくなったジャポニカ学習帳やぬりえの表紙の厚紙を襖の補強に利用して上手に張り替えていた。使えるものはなんでも使っていた…

今年の贈り物

毎年7月の誕生日と12月のクリスマスには兄に靴や服を贈る。 買い物の予算は10万円までで、今年も何がいいか悩む。 なぜか中学くらいから兄に頼まれて私が服を買っていた。 今年も店員さんと会話を楽しみながら買い物がしたい。 「こちらなんか保温効果のある…

我が家のお出かけ

家族で出かけた思い出は泊りがけは一度もないが、遠出の日帰りは二回あった。一つは須磨に泳ぎに行ったこと、もう一つは団地の母の日の催しで「カーネーション旅行」という名の日帰りバス旅行で、まだ母が団地の人と普通に会話ができていたから、私が小学校…

冬は丸くなる

母が押し入れから布団を出して敷く。 二枚の敷布団を横向きに使い、その上に母を真ん中に川の字になって寝る。 夏は朝起きると敷布団と敷布団の間に隙間ができてお尻がはまっていることがある。 冬は敷布団の上に毛布を被せる。 毛布の端はめくれないように…

いつまでたっても

昨日テレビで「ひきこもり」が取り上げられていた。学校や仕事に行かないで家にいる人を「ひきこもり」というなら、兄が高校の先生を殴って退学になった後、あちこちで少し働いたが人間関係が上手くいかなくて何年か家にいた時期があったことを思い出して、…

兄の思い

母は兄にはお小遣いをあげていたようで、大量のガンプラ、エアガン、漫画が我が家にはあった。しかしテレビ、電話、エアコン、給湯器は我が家にはなかった。 欲しいものがほぼない私とは違い、低学年から高学年になるにつれて兄は他の家にあって我が家にない…

幼げのいたり

母は夜ご飯以外、用意することはあまりなかったので、兄と私はいつも適当にご飯を食べていた。ある日、冷蔵庫に何もなくて、ふりかけもない時、兄は「おかんを起こして出前を取らせよう」といい、いつものようにパンイチに近い服装でごろ寝している母の足の…

入院事③

兄に頼まれた新刊、兄がこれを読むために意識を取り戻したような気がして今でも巻数と表紙が脳裏に焼き付いている。驚くことに兄は飛び降りたことも集中治療室で新刊を頼んだことも記憶にない。私が新刊を持って行くと「よく知っていたな」と驚いていた。過…

入院事②

救急車が猛スピードで右折左折を繰り返し、ようやく医大病院に到着する。私は救急車に酔い、暴れる兄の足で何度もお腹を蹴られたこともあり、吐き気が酷く、駐車場で座り込むと母に先に行くように言う。この時、自分が靴下だけで初めて靴を履いてなかったこ…

入院事①

中一の冬、吹雪の中、私は自転車の後ろに母を乗せて病院に行く。胸の痛みと息苦しさでしんどいはずなのに、私に雪が当たらないように後ろから母は傘をさしかけてくれる。私が傘はいらないと言っても母は傘をたたまない。 診察を待つ間に母は動けなくなってし…