ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

年末

我が家では12月は襖の張り替えをしていた。四畳半の部屋で兄と走り回って遊んだりしていると一年で襖はボロボロになる。母は使わなくなったジャポニカ学習帳やぬりえの表紙の厚紙を襖の補強に利用して上手に張り替えていた。使えるものはなんでも使っていた。兄は今、母の器用さを思い出しては立派だったと感心している。

 

母が磨いた便器は新品のように白くなる。掃除中、キイキイと長時間不気味な音がしていた。ぐにゃりと曲がったアルミスプーンを持った母がトイレから出て来る。ホラーだ。

 

マジックリンを混ぜたバケツの水を使い雑巾で壁を拭く。煙草のヤニ色の壁が一気に白くなり、バケツの水は茶色く濁った。台所の床は亀の子たわしを使い、ビニールカーペットの模様に合わせてこする。母は借り物の部屋をきれいにする気にならないといい、こまめに掃除をする人ではなかったが、年末だけは家族全員で徹底的に掃除をした。