ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

曼殊沙華③

私が3回生になる頃、院生二人の共依存関係に変化が起きる。長く暮らしていた借家はそのままにして、女性がもう一つ部屋を借りて生活の拠点をそこに移したのだ。仲が悪くなったというわけではない。依然として連絡は取り合っていたようだ。その頃、私はバイ…

曼殊沙華②

サークルで知り合った院生の二人も知っている人で、トランスジェンダーの人とも関わることがあった。私はトランスジェンダーに興味はないが、50代にしてはドラえもんのように愛くるしい独自のキャラクターを固めているのが気になった。この人は出会って初対…

曼殊沙華①

大学で知り合った人たちの中でSMを研究している院生がいた。私はSMには興味はないが、サークルで初めて会った時から何か通じるものがあり、家に遊びに行ったり来てもらったり、一緒にイベントに参加したりして交流を深めていった。ごく普通の可愛らしい女性…

心の色

今週のお題「わたしの好きな色」 好きな色はその時々で変わる 心が沈むと、色が認識しにくくなる 「世界が全部モノクロでカラーじゃないんです」と 東尋坊で身投げをしようとしていた人がテレビで語っていた さて今の私の好きな色は何色か まずはどんな色に…

仕事が忙しくて出勤できない

出勤したら現場の仕事に追われて事務仕事ができなくなるため、家で事務仕事をして出勤する。職場には仕事が忙しくて出勤時間が遅れることを連絡する。役職手当をもらっていても割が合わない。休日も電話で職場とのやり取りがある。早くサブリーダーを育てな…

勤続表彰

先日、勤続表彰で賞状と粗品をいただき、ホテルでのフルコースを堪能した。正直、長く働いている実感がない。一年一年が全力でもう無理だと思うことが何度かあっての勤続表彰である。慢性的な人手不足に苦しみ続けた。休みが少ないのをカバーすることと、早…

父の日を祝えること

今週のお題「おとうさん」 母子家庭で育ち、父を知らなかった私が結婚して人生初の父の日をどうするかを考えた時、なんとも言えない気分になった。お義父さんが自分の息子より11才も年上の嫁を認めてくれたこと、孫がいなくても優しくしてくれること、おいし…

チコ

ミコの次に家に来た犬は血統書付きのメスのシェルティで名前はチコ。私が小学校3年生の時である。交配目的で母が飼い始めたのだ。餌は味噌汁をかけたご飯ではなくドッグフードである。犬好きの隣の団地の友人を誘って母と三人で散歩に行くこともあった。チ…

会話

ここはどこだろう「♪」なんか出た。 もう一度「♬」なんだろう、これ。 あれ、何かが近くにいるぞ、温かくて気持ちいいな。 「おはよう」 何か来た。同じの出せるかな。 「おはよ」どうかな? 面白いぞ、もっといろいろ真似てみようかな。 いろいろ出せるよう…

六十の手習い

たまたま団地のポストに入っていた夜間中学校の案内チラシを見て、還暦を迎えた母に勧めてみることにした。兄もそれには乗り気で一緒に勧めてくれる。母には友人と呼べる人は一人もいない。プライドが高く頑固な性格だからか、せっかく知り合っても喧嘩別れ…

空から水って

テレビを消して静かに雨音を聞く 雨足が強くなるとゴボゴボと排水溝に流れる音 わくわくしてくる 雨音を聞きながら寝るのは気持ちいい 休日の朝に雨が降っていると休みがさらに楽しい 理由はわからない 今週のお題「雨の日の楽しみ方」

最初の覚悟

私が定食屋で働いている時、兄は高校を中退して家にいた。私は兄が家にいるのが嬉しくて、時間がある時は一緒にゲームをして遊んだ。母が兄の将来を心配して叔父に相談すると、精肉店を営む叔父が兄に一緒に仕事をしようと持ち掛けてくれた。兄は精肉店で働…

空回り

団地に部屋と風呂が増築されると、母と兄と私が自分の部屋を持てるようになり、三人で食事をすることはなくなった。私は料理を作るとまず兄の部屋に、次に母の部屋に持って行くという順番にしていた。 定食屋で身に付けた腕前で自慢のかつ丼を作った日、いつ…

ミコ

いつからいたのかスピッツのような白い犬がいた。名前はミコで玄関に誰かが近づくだけでよく吠える。府営団地で動物を飼うことは許されていなかったが、母は番犬代わりだといい飼っていた。私が生まれて間もない頃に離婚した相手が時々手紙を送ってくること…

ホットミルク

今週のお題「家で飲む」 片手鍋に牛乳と砂糖を入れて かき混ぜながらゆっくりと温める。 出来上がった熱々の牛乳を大きな浅いスプーンですくい 何度も何度も鍋とコップを往復してに移し入れる。 私は「早く飲みたい!早く早く!」とせがんだ。 牛乳がコップ…