ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

曼殊沙華①

大学で知り合った人たちの中でSMを研究している院生がいた。私はSMには興味はないが、サークルで初めて会った時から何か通じるものがあり、家に遊びに行ったり来てもらったり、一緒にイベントに参加したりして交流を深めていった。ごく普通の可愛らしい女性で、いつも「ポチ」と周囲から呼ばれている体格の良い男性と一緒にいた。この人は社会歴史学を研究している院生である。二人は共依存の関係だといい、5年以上共同生活を続けていた。二人とも共通している特徴は虚ろな目だった。

 

 

二人とも研究熱心で借家の中は足の踏み場も無いほど本があり、ついには本を置くためだけのトランクルーム代わりの部屋を探すほどだった。そこで、私の住むアパートの格安部屋を紹介したことがある。H型に建てられた2階建てのアパートの1階の片側は、風呂無し共同トイレでもう一方は私が借りている風呂トイレありだ。2階は全てデイサービスを受ける人専用の部屋となっていて、1階の風呂無しの部屋が一つだけスタッフの休憩用として使われていた。不用心なことにその部屋はいつも鍵をかけていない。中庭の共同物干し場に行く時、ドアが開けっ放しになってることもしばしばあった。私は二人に夜こっそり部屋の広さを見に来てもらうことにした。

 

 

近所の夏祭りに一緒に行った帰り、あの部屋を二人に案内した。ドアを開けて部屋の電気を点けた瞬間、黒い影がざっと動く。明るくなった部屋を見渡すと六畳一間のいたるところにものすごい数のゴキブリがいた。台所、壁、床、棚と部屋はきれいに使われているようだったが繁殖させているのかと思うほどいた。ゴキブリが苦手な私は、こんな部屋を見せてしまい申し訳ない気持ちでいたが、二人とも全く気にすることなく、むしろ喜んでいる様子が不気味だった。

 

数日後、駐輪場の空きスペースに大量のホウ酸団子が天日干しされていた。