ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

情操教育

兄が漫画本を集めだすまで我が家にあった本といえば、青いハードカバーのイソップ童話集、カラー写真の料理本、編み物の本、それから一度だけ家族で観に行った映画の原作『積み木くずし』の四冊くらいだろうか。『積み木くずし』は暴力を振るうようになった子どもと戦っている親の話で、親がまともな人間に描かれていたという印象しか残っていない。母は「お前らもあいつの血が流れているからいつかああなるかもな」と言い、兄や私が不良になるのを恐れていた。あいつとは離婚した相手のことだ。

 

家族で出かける初めての映画は、同時上映のアニメを楽しみにしてついて行ったのに、そのアニメがなんだったのか忘れるくらい『積み木くずし』は怖くて、まるで『エクソシスト』を観ているようだった。

 

我が家にラジカセが来るまでは三枚のレコードを飽きるほど聴いていた。一人一枚ずつ好きなレコードを選んでいいと言われ、兄は『科学忍者隊ガッチャマン』、私は『銀河鉄道999』。母が選んだ森進一の『おふくろさん』はミニオルガン付のポータブルレコードプレイヤーで毎日のように流れていた。これも情操教育のつもりだったのか。

 

 

おかげなのかどうなのか、兄も私もぐれることはなかった。