ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

当時の音

 

レコードで「出来るなら当時の音を聴きたい」と、モノラル用カートリッジを購入するという、とあるブログを読んで。

 

 

私が7歳の時、我が家にようやく白黒だがテレビが来た。兄が友人からもらったものだが、それまでテレビは何かの集まりにでも行かない限り見ることはなかった。母と私は何も欲しがらない。我慢ができた。というか諦めていたのか。我が家にもたらされた文明は全て兄のおかげである。母もテレビの必要性に気づくと、生活保護を受けていても翌年にはカラーテレビの購入に踏み切った。

 

兄と私は娯楽ではなく「物語」に飢えていた。先の見えない未来への不安を早くからもっていた兄は、好奇心だけで物語を楽しむ私とは違い、気晴らしの要素もあったのだろう。「物語」への執着は兄の方が上だった。もしも学校の義務教育だけしかない状態で成長していたら、兄と私の道徳心はどうなっていたのか考えただけでも恐ろしい。

 

どうしてもアニメのOPとEDを録音したくて、ラジカセをテレビに近づけて録音していた時期がある。当時は過去のアニメがいつでも視聴できるなんて、そんな未来を想像できなかった。だから全てのアニメの歌だけでも残しておきたかったのだ。「静かにしろ!」「しゃべるな!」と気合の入った兄。録音の数分間、母と私は息を凝らしていた。ところが、いいタイミングでウズラが鳴き出す。母は動物が好きだったので、犬や猫以外に小動物も飼っていた。つがいで飼っていたウズラは一日一個の卵を産んでくれるけれど、産む前後に鳴くので、録音中にウズラの鳴き声が入ることは度々あった。

 

その思い出のカセットテープだが、今は私が全て持っている。兄は捨てていいと言うが、ウズラの鳴き声の後に、母と兄の笑い声が録音されているテープは私にとっては宝物なのだ。

 

 

まさに当時の音!