ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

兄の思い

母は兄にはお小遣いをあげていたようで、大量のガンプラ、エアガン、漫画が我が家にはあった。しかしテレビ、電話、エアコン、給湯器は我が家にはなかった。

 

欲しいものがほぼない私とは違い、低学年から高学年になるにつれて兄は他の家にあって我が家にないものがあるということへの不満が強くなっていく。

 

ある日、兄が友人からいらなくなった白黒テレビをもらったことをきっかけに、母にテレビの良さを説得して、その後カラーテレビを買ってもらう。共同アンテナが団地に取り付けられるまでは、外に付ける大きなアンテナを部屋の天井に取り付けていた。

 

それからビデオ、電話、給湯器のある生活も手に入れることができたのは兄のおかげだ。私はいつも便乗していただけである。

 

プラモデルが好きだった兄は手先も器用だった。ラジオや時計を解体しては中の仕組みを調べてまた組み立てる。パソコンも中古を譲ってもらっては自分で組み立てていた。自分が何に委ねて生きているのかを考えずにはいられない。バイクに乗るにもまずは解体だ。兄は「自分の尻の下にあるものが何かを考えずに乗ることはできない」という。そんな性格のため自分の死ぬところまで早くから想像していたのだろう。「おまえは気楽でいいよな」とよく私に言っていた。私は兄とは正反対で先の未来は考えない。能天気だった。

 

兄の相談役にはなれなかった私だが、自暴自棄にならなかったのは私のおかげだと兄は言う。理想にしていた『サザエさん』のような家庭を手に入れている兄は、今は母に感謝している。兄は少し時代遅れなところもあるが、楽しくしているのが嬉しい。ちなみにダンナは、なぜか兄を非常に怖がっている。