ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

他人の力

 

『ひげを剃る。そして女子高生を拾う』最終回

 

物語の主人公、吉田は仕事帰りに家出中の女子高生沙優を拾う。沙優を心配して実家に送り届ける吉田であったが、自分の子どもを前にして「あんたなんか産むんじゃなかった」と言う沙優の母親の言葉にかっとなる。吉田は母親にグラスの水をとっさにかけようとするが、いや違う、これではないと冷静に考えて、とった行動は土下座だった。

 

「俺には責任も資格もないから沙優を守ってやることができない。こいつを育ててやれるのは悔しいがあんたしかいないんだ。だから頼むこいつを育ててやってくれ」と土下座をする。それを見た沙優の兄も、吉田と同じように土下座をして母に妹のことを頼む。この時のことを沙優の兄は、兄である私もしなかったことを他人であるあなたがやってのけたと言っていた。

 

 

子どもがやんちゃな頃は「勝手に産まれてきたくせに」と、私の母もよく口走っていた。今では母親という役がまだ慣れていないからうっかり口にしていた言葉だとわかる。しかし子どもにとって親は絶対的な存在だから、もやもやとした嫌な気持ちは忘れられなくてずっと覚えているものだ。

 

土下座をしないまでも私を育てたいと思ってくれる人はいた。道徳的なことを教えたいと、我が家を心配してくれた人たちを思い出すと、それだけで力が湧いてくる。