ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

実家の片づけ①

 

その日は40年以上母が暮らした団地の実家を片づけるために朝から気合が入っていた。実家に着くと先に来ていた兄と兄の友人Yさんが既に片づけを始めている。Yさんは中学からの兄の旧友で、当時の私は兄の友人に声を掛けられると緊張してしまい、びっくりして逃げるような行動をとっていたから変な妹だと思われていたはずだ。玄関で私を見るなりYさんは食い入るようにしげしげと私を見る。藤井フミヤに似ていたYさんは、肉付きがよい貫禄のある大人になっていた。昔から知っている人だが、まともに話したことは一度もない。そのため今初めて会ったような気もした。Yさんは玄関を叩かないで、窓の下から「坊さーん」と呼び、兄を遊びによく誘いに来ていた。坊さんとは兄が学校でいたずらをして坊主にされたことからつけられたあだ名のようだ。

 

 

団地の前の広場に可燃ごみ不燃ごみの置き場を決めて段取りよく運び出す。広場の隅には押し入れから出てきたエロ本が大量に積み上げられた。実家の片づけを一日で終わらせることができたのはYさんの力が大きい。大きな箪笥をただの板にする手際の良さ、「仏壇はどうする?」と聞いてきたので私が「いらない」というと、躊躇なく仏壇を解体していく様子は逞しかった。兄と私の動きが止まるとケガをしていないかさりげなく気配りもしてくれる。Yさんは広場に山積みにされたゴミを知り合いの業者に頼んで処理してくれるまで最後まで力を貸してくれた。実家の最後、たった一日の出来事なのに忘れられない、忘れてはいけない。

 

 

 

あとから手伝いに来てくれた兄嫁と一緒にYさんがかっこいいと褒めていると、兄はあのエロ本は全部Yから流れてきたものだと言っていた。