ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

いつまでもわからないこと

 

長い間、一人暮らしを楽しんでいた。なぜか一度も自分の人生に結婚という未来を考えたことはなかった。可愛いお嫁さんになると言ってたクラスメイトがたくさんいても、次々に結婚していく友人がいても、自分もいつかはなどとは考えたこともない。

 

 

彼とは大学を卒業して数年間、年賀状のやり取りしかしていなかった。当時、誰もが持っている携帯すら持とうとしない私は、固定電話と葉書で十分用は足りていた。半年間、不釣り合いな年齢と私には何もないということを言い続けたにもかかわらず、とうとう結婚を決める。結婚式など挙げる気はなかった。ちゃんとしないとダメだと言うので挙式はすべて彼に任せた。挙式の当日になってもまだ自分のことではないような気がしていた。

 

 

母は認知症で私を覚えていない上に足腰が弱く、挙式に呼ぶことはできなかった。大勢の親戚が出席する彼とは違い、私の身内は兄夫婦のみである。兄にエスコートされてバージンロードを歩く。太った兄に小声で「手を入れる隙間がない」とからかうが、兄はそわそわしてずっと心ここにあらずの様子だった。

 

 

挙式後の会食では特別に作られたケーキを切り分ける。「こんなうまいケーキは初めてだ」と言い、兄が口いっぱいに頬張る姿を見ていると、兄を喜ばせることができて良かった、結婚式をして良かったと思えた。

 

 

しかし、なぜこんなに結婚に全く興味がなかったのか、今でもわからない。