子育てよりも難しいこと
働く動機が「中学生になる子どもが部活を始めたから」と言っていたから、すぐに辞めそうな気がしていた。この人は民生委員のボランティア活動をしていることもあって、人当たりもよくて職場内を和やかな雰囲気にしてくれるムードメーカーだ。
私は勝手に彼女の感性を主婦の平均基準にしているところがある。ずっと専業主婦をしてきた人ではあるが、応用力が高く、仕事ではかなりの戦力になっている。「子どもが部活を辞めたから仕事を辞めたい」と言ってきた時、なんとかして引き留めた。子どもの気持ちにできるだけ寄り添おうとすると親はこうなってしまうようだ。子どもが友人と同じクラスになれなかったと言えば一緒に落ち込み、いよいよ受験生ともなれば仕事に身が入らなくなるから午前中だけの勤務にしてほしいと言ってくる。義務教育が終了すると親の役目は終わったと言っていた私の母とは違う。彼女の子どもは二人いて今はどちらも大学生になっている。そして子どもが自立していくと同時に彼女も勤務時間を増やして、新人の教育を手伝ってくれるようになった。
私は仕事を教えるよりも子育ての方が遥かに難しくて大変だと思っていた。しかし彼女は「他人に責任感をもたせることのほうが難しい、自分の子どもは自分色に染めればいいからまだ簡単」だと言う。
なぜか子育てよりも難しいことをしているのかと思うと、少し肩の力が抜けた。
