ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

猪突猛進

 

小学校の時『キャンディキャンディ』が大好きで、そのキャラクターになりきっていた友人がいた。キャンディと同じように癖毛とそばかすが自分にもあることで共感をもっていたのだろう。彼女は服装や髪型も流行に敏感で私よりも女子度が高いほうではあるが、満員電車の中で急におにぎりを食べ出したり、外で歩きながらコンビニ弁当も食べられる大胆さをもっていた。私には絶対できないことだ。

 

 

彼女は高校生で家出をして、そのまま学校を中退すると当時付き合っていたクラスメイトと同棲を始める。なんと彼の親が部屋を借りて二人で住むことを了解していた。彼女は家出をする前はスクーターや小型バイクを買ってもらえるような環境で暮らしていた。家出の理由は親とケンカしたとかだったか。

 

 

家出中の彼女に誘われて、めったに出かけないオシャレなショップが立ち並ぶ繁華街に遊びに行く。とある雑貨屋さんに入り、私が可愛いデザインの指輪に目を輝かせて見入っていると、彼女は「それ、気に入った?」と聞いてくるので、可愛いけど私には合わないかなと言った。しばらく店内を見て次はどこに行こうかと外に出ると、不意に彼女は私の目の前に握りしめた手を出す。そしてゆっくりと指を開くと、私が見入っていたあの指輪が二つあった。「おそろいだね」と彼女は笑う。

 

 

友人が万引きしたことのショックで一気に気分が悪くなる。万引きはよくないから返しに行こうと言うと彼女は急に不機嫌になり、家出の身では働けないから、収入がなくて万引きするしかないと、今着ている服も万引きしたものだと言う。私はそんなことをしていたら彼にも嫌われるからやめたほうがいいと言うと「じゃあ、あなたが私にお金くれるの?」と、それから嫌な雰囲気が漂うと、しらけたのか彼女は帰ってしまう。

 

 

結局彼女は何度目かの万引きでとうとう警察に捕まり、それを知った彼からは別れを告げられ家出は終了した。その後、結婚と離婚を繰り返して、最後に私と会ったのはもう二十年くらい前になる。当時、一人暮らしをしている私の部屋に二人の子どもを連れて遊びに来てくれた。その時気になったことは、子どもは普通に座布団に座っているのに、彼女はずっと最後までうんこ座りをしていた。足を伸ばしてくつろぐようにとすすめるが、彼女はこの体制が一番楽だからと言う。よくわからないが私は彼女が元気にしているのが何よりも嬉しかった。バツ2でシングルマザーの彼女は「もう結婚はいい」と言っていた。

 

 

今はお互いにいつの間にか連絡が取れなくなってしまったが、私にとって彼女はいつまでもリアル『キャンディキャンディ』で、おてんばやいたずらでは生ぬるい、とにかく危険な特攻レディだった。

 

 

 

あれ、もしかしたら痔だったのかもしれない。