ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

つっかけの音

母は年中つっかけを履いていた。擦り切れて四角いマス目の骨組みがむき出しになった左右のかかとには小石が2、3個詰まっていて、歩くたびにカラカラ音がしていた。「お母さん、かかとに小石が入ってるよ」と言うと「お前たちのせいでお母さんはこんなことになっているんだからな」とよく言われた。しかし母の歩くつっかけの音は嫌いではなかった。まるで赤ちゃんをあやすガラガラのようなリズミカルな優しい音だった。ジャッカラカラ、ジャッカラカラ。