ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

寂しさから

 

働き始めると少しは自由に使えるお金ができる。

 

友人と遊びに行く準備をしていたら、いつの間にか母に財布からお金を抜き取られていることがあった。遊びに行った現地で財布に五千円しか入っていないことに気づいて慌てる。母が取った金額は七千円で返してくれることはなかった。

 

その頃の母の口癖は「お前らは楽しくていいよな、お母さんなんかなんにも楽しくない」だった。

 

兄と私が公共料金の計算をしていたら、こたつの上に置いてあった四万円が消えたこともある。兄が母を問い詰めても母はだんまりを決め込む。しかたなく母の近辺を探したら天板とこたつ布団の間から四万円は見つかった。

 

母の楽しみは煙草とパチンコだった。兄が母に給料が振り込まれる通帳を預けて働くようになった時、母は通帳から毎月全額引き出してはパチンコをしていたようだ。兄が何に使っているのか聞いても母は何も話さない。兄は母に通帳を預けるのをやめる。

 

母は夜間中学に通い始めると、これまで見たことのない熱心さで勉強に励み、クラスメイトと遠足や修学旅行を楽しんでいた。

 

 

 

         f:id:ingakouryuu:20191002225853j:plain

 

 

母は寂しかったのだ。