ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

入院事②

救急車が猛スピードで右折左折を繰り返し、ようやく医大病院に到着する。私は救急車に酔い、暴れる兄の足で何度もお腹を蹴られたこともあり、吐き気が酷く、駐車場で座り込むと母に先に行くように言う。この時、自分が靴下だけで初めて靴を履いてなかったことに気づく。

 

緊急手術が終わると兄が苦しがっていた原因が分かる。ラグビーの練習で骨折した肋骨の骨が肺に刺さり肺の裏に血が徐々に溜まっていき、肺が膨らまなくなったため呼吸困難に陥ったということだった。兄は息苦しさに耐えられず無意識に高い所から飛び降りてしまい、腕と足を骨折する。頭から落ちなかったこと、落ちた所のすぐ横にあった車止めに頭が当たらなかったことでぎりぎり助かったのだ。

 

母と私は兄の意識が戻ったと言われ、集中治療室に呼ばれる。手足を吊るされ、呼吸器が取りつけられた兄が何か話したいようなそぶりを見せるので、五十音表を兄の前に出すと、無事だった左手を使い一字一字文字を指す。『コータローまかりとおる16巻』と『いとしのエリー8巻』が明日発売日だから買ってこいという内容だった。漫画が好きな兄はこんな時でも新刊の発売日を忘れないのかと、これならもう大丈夫だなと、というか不死身かと思った。