ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

チミ

鳩でもいいから飼いたいと無茶をしてからその後、セキセイインコ文鳥が我が家にやってきた。兄は相変わらずで、鳥を頭から口でくわえると、そのまま持ち上げて高い高いして可愛がっていた。しかしどの鳥も皆数か月で死んでしまい、長生きすることはなかった。兄と私はまだ飛べない雛をアニメで見た巣立っていく鳥のように飛ばそうとして死なせてしまったこともあった。兄と二人で裏の公園に埋めに行き、アイスの棒でお墓を作っていると、知らない子どもにからかわれたが、雛を死なせたショックで何も言い返すことができなかった。

 

 

母がグレーでほっぺたが朱色のオカメインコを飼いだした。名前は「チミ」。チミは我が家で飼う最後の鳥となった。ほとんど母の肩にいた。母から口移しでご飯粒をもらったりしている。ペットショップから教えられた通りにちゃんとした鳥の餌もあげていた。ヒマワリの種はチミだけでなく、兄と私もよくつまみ食いをしていた。さっぱりしているのに噛むとほのかな甘みと濃厚なうまみがあっておいしかった。

 

 

チミが来て2年経った頃、チミの体調がおかしくなったので、母は歩いて1時間近くかかる隣町の動物病院に診せに行った。病院の先生は鳥も人間と同じ病気を持っていて、チミは肺の病気でもう長くはないと言う。原因は母の煙草の煙だった。鳥カゴが常に高い所にあったのと、よく母の肩にいて煙の近くにいたこと、また母が遊びでチミに煙を吹きかけていたことが病気を早めたそうだ。母は兄や私にもしょっちゅう煙を吹きかけて遊ぶような人で、受動喫煙の害を考えたことがない人である。チミを死なすことになっても子どもを産む前からの喫煙習慣をやめることはなかった。しかし母にとってチミは心の支えだったようでチミを思い出しては泣いていた。

 

 

中学を卒業して働くようになってから、二段ベッドの上段で寝ている自分用にセンサー付きの空気清浄機を買った。チミによって私は煙草の害を考えられるようになり、短命に終わった鳥たちからも忘れられない過ちが心に刻まれた。