ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

庇の鳩

団地の窓には緑のビニール製の蛇腹で折りたためる半円形の庇が付いている。無くても困ることはないが、雨が強い日に庇を広げるとビニールを打つ雨音が気持ちよかった。庇をたたんでおくと、蛇腹で弛んだ部分に鳩が巣を作ることもあった。

 

庇は何年も使い続けていつの間にか無数の穴や裂け目ができていた。ある日、広げたままの庇に数羽の鳩がいた。鳩が裂け目に足を取られて慌てているのを見た兄は、鳩を捕まえることができると確信する。

 

庇の上に餌となる米粒をまき、それを食べている鳩の足が庇の裂け目にはまった瞬間、その足を掴む。鳩の動きを封じたら素早く部屋の中へ投げ入れる。鳩を捕まえる職人のように短時間で次々と同じ方法で捕まえていく。興奮した兄の声と得意げな顔。私も興奮して騒いでいた。

 

部屋には鳩が六羽いた。兄と私は鳩を飼いたいと思い、早速名前を付けた。兄は「ザク」「ドム」「グフ」と名付け、私は「キャンディー」「アニー」「パティ」と名付けた。

 

好奇心旺盛の私は鳩胸がどうなっているのか知りたくて羽毛をかき分けて地肌を見る。地肌に半透明の長い寄生虫がくっついているのを見た瞬間、気味が悪くなり鳩を逃がすことにした。しかしその時既に、兄は鳩が可愛くて口の中に入れてなめまわしていた。衛生的にやばい。

 

ザク、ドム、グフ、キャンディー、アニー、パティ…さようなら。そしてごめんなさい。