ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

屋台のラーメン

 

夜9時頃、チャルメラが聞こえてくると兄がラーメンを欲しがる。兄が母を説き伏せてやっと手に入れたものを私はよく便乗していた。そのためパシリにはよく使われる。急いで軽トラの屋台を追いかける。全力で追いかけていると誰かに追われていると勘違いされて「大丈夫か!」と信号待ちの車から声をかけられたこともある。

 

 

屋台を呼び止めると家の近くまで来てもらう。私は遠慮のない子どもならではのギラギラした目で作り方をじっと見ていた。まず麺を茹でる。発砲の鉢を三つ並べると、それぞれにレードルですくった液体とタッパーに入った粉末を入れる。粉末がジャっと鉢にぶつかる音がするくらい動作が早い。スープを入れると茹で上がった麺を浅い網ですくいチャッチャと湯を切る。3玉一緒に茹でてバラバラになった麺を、網ですくっているだけなのにちゃんと一人前ずつ取り分けられていた。焼き豚、卵、薬味は小さな箪笥の引き出しから取り出す。出来上がった鉢にラップをすると、ラップがめくれないように輪ゴムでとめてくれる。私が持ってきたお盆にラーメンを載せて帰る時、おじさんが「お嬢ちゃんこれあげるよ」と言って板チョコをくれた。母に怒られるような気がして一瞬もらうのを躊躇したが、板チョコの魅力に負けてもらってしまう。

 

 

おじさんの顔は思い出せないけど優しかったことだけはいつまでも覚えている。

 

屋台のラーメンはスープも残さない。完食できるほどおいしかった。