ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

我がまま

兄は流行りの合体ロボ、ブリキのサンダーバード2号、プラレール、大量のガンプラワルサーP38、44マグナムのモデルガンを持っていた。私の不注意でプラモデルを棚から落下させてしまいビームサーベルを折ってしまったことがある。いつまでも愚痴を言われたが今では良い思い出だ。

 

私は小学校高学年になると母のお金が無いという口癖を気にして、物を欲しがることをためらうようになる。母も何も欲しがらない私を褒めてくれる。しかし母は気まぐれで、おそらく兄がいたずらをして失望した時だけ大盤振る舞いをしてくれるのか「こえだちゃんと木のおうち」、水が出るキッチン、『花の子ルンルン』のコンパクトを買ってくれた時は、無敵になったようなわくわく感をもてた。

 

幼い頃、はたき棒を人形の代わりにして遊んでいた。人形の顔はレースのような柔らかい生地を束ねている棒の根元で、ちょうど段差のあるところだ。はたきの部分は長い髪として、ゴムで縛ったり三つ編みをして遊んでいた。母が私を揶揄するので何かおかしなことをしていると思い、恥ずかしくなって遊ぶのをやめたが、その後人形が欲しくなることはなかった。

 

母に連れられて家族で初めて叔母さんの家に遊びに行った時、青い目の白猫のぬいぐるみがどうしても欲しくなる。叔母さんは飼っている犬のお気に入りのおもちゃだからあげられないと言う。それでも私は初めて触るふわふわのぬいぐるみがかわいくて、抱っこしたまま離そうとしない。渋々叔母さんに持って帰ることを許してもらえたが、その時の罪悪感はけっこう尾を引いた。叔母さんから何かもらったのは、これが最初で最後ではあったが、それから叔母さんの家族全員に犬のおもちゃを欲しがった子として記憶されてしまう。

 

母の葬儀に叔母さんを連れて来てくれた会うのが二度目の従兄は、あのぬいぐるみの一件を覚えていた。私は兄よりいくつか年上の従兄に「話しかけてほしかったし遊んでほしかった」と、当時もじもじして蚊の鳴くような声でしか話せなかった自分の心境を思わず口走る。従兄は困った顔をして無言だった。従兄は小さい女の子と遊んでも面白くなかっただろう。分かっていたのにまた我がままの印象を与えてしまった。