ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

サクラ サクラ

 

夜、向かいの団地に住んでいるおばちゃんが母を誘いに来る。母が連日出かけたのは、一週間くらいだろうか。どこにでもついて行きたがる私は、おばちゃんを味方につけて、ついて行ったことがある。

 

スーパーの2階にある広いイベントスペースに着くと、既にたくさんの人が靴を脱いでブルーシートの上に座っていた。始まるまでの待ち時間に流れていたキョンキョンの『春風の誘惑』は、今でも耳に残っている。これから何が始まるのかわくわくした。

 

みんな主催者を「エムさん」と親しげに呼んでいた。開始は8時だったか、2、3人の若い男性がコントや漫談でいろんな商品を紹介する。大きな声で快活に話す陽気な大人に目が釘付けになった。一通りの紹介が済むと「こちらの商品が欲しい方!」と一つ一つ希望者の確認をしていく。希望者は手を挙げるだけだ。会計係はそれを見て素早く対応する。もちろん買いたいものがなければ何も買わなくてもいい。小1時間このイベントに付き合うだけで帰りには卵1パックと箱に入った茶碗や湯飲みのセットを参加特典として毎回もらえる。母はこれが目的で参加しているだけだと思った。

 

ところがある日、我が家にマットレスが送られてくる。磁石が埋め込まれたマットレスで、母はこの上で寝ると全身のコリがほぐれるとか言っていた。かなり高額だったはず。

 

集まっている人の中にはサクラが混ざっていて手を挙げて商品を買うふりをしていたのだろうか。桜を見ていたら思い出した。