ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

晩ごはん

高学年になると母から毎日千円をもらって買い物に行き、夕食を作るようになる。

 

母は徐々に家事をしなくなった。

 

ランドセルを背負い夕食のおかずを考えながら帰宅する。これといって料理を教えてもらったこともないので何をしたらいいのかわからない。家に帰るのが億劫で友人と石けりをしてゆっくり帰ったりしていた。

 

魚は焼くだけでいい。料理といえば、たれ漬けされた肉と野菜を炒めたものや卵焼きくらいで作れるメニューが少ない。コロッケはお皿に盛るだけで簡単だが続けると飽きられる。

 

何か料理のヒントを教えてくれることを期待して、調理実習が終わった後で家庭科の先生に私の作れる料理が少ないことを相談したら、困った顔をして「大変ね~」と言われただけだった。勇気を出して聞いたため何も得られなかったのは残念だった。今思えば学生に親身になれる先生はかなり珍しいようで、先生のあの態度もなんとなくわかる。

 

図書館で料理本を借りて勉強するが、難しかった。「ひとつまみ」「味を調える」など意味が分からない。私は頭でっかちだった。

 

働くようになってから初めて買った料理本はまだ家にある。婦人生活社の『料理なんかこわくない』では包丁の握り方、動かし方、力のかけ方、体の姿勢等、基本中の基本から解説している。その後、定食屋で働いたことをきっかけに料理をすることへの不安感はなくなっていった。