ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

小学生

ドンジャラ

我が家の娯楽は兄が友人からいらなくなった白黒テレビをもらったことから始まる。もらったその日に『うる星やつら』の第一話がちょうど放映され、それを見たことにより兄のカラーテレビへの憧れが強くなり、また母もテレビの面白さに気づき、ほどなくしてカ…

母を待たせる

酷く暑い日だった。母をずっと踏切の傍で待たせてしまったことがある。なぜ待たせることになったのか覚えていないが、母は後から家に帰って来ると思い、自分だけ走って先に帰り、冷たい麦茶を飲んでほっと一息ついていた。その後、いつまでたっても帰ってこ…

半分こアイス

今週のお題「わたしのイチ押しアイス」お小遣いをもらった記憶がない。お年玉も中学生が最後で3千円あったかどうか、とにかく働くようになるまで自由に使えるお金はなかった。 夏は子どもたちにいつでもキンキンに冷えたほうじ茶を出してくれる集会所の近く…

母の写真

母はよく笑う人だったが、七五三のお宮参り、卒業式、遊園地、帰省等で撮った写真では笑っている写真が一枚もない。手元にあるアルバムではどの写真も真顔だった。睨みつけているようにも見える。考えてみれば愛想笑いをしているところを見たことがない。と…

夏休みの宿題

夏休みの宿題はいつもぎりぎりまで手つかずだった。あと3日しかないというところまできて徹夜をして仕上げるのがお決まりだった。部屋の隅には終業式の時のままのランドセルが転がっている。この時期、台風が逸れるたびに残念がった。 私には頼みの綱がいた…

源氏の滝

小学4年生だったか、クラスでも一番勝ち気でリーダーシップをとっていた一人の男の子が、二学期早々机に突っ伏して泣いていた。彼は夏休みに上級生たちと一緒に5、6人で山登りに行った時、クラスメイトが足を滑らせて滝つぼに落ちて亡くなったことを自分の…

この世界に空があること

今週のお題「空の写真」母の犬の散歩は季節関係なく決まって夜だった。母と一緒に外に出るのが好きで私もよくついて行った。いつもの公園で母とベンチに座る。母は煙草を吸い、私は星がきれいで夜空を眺めていた。いくら目を凝らしても先が見えない空。この…

チミ

鳩でもいいから飼いたいと無茶をしてからその後、セキセイインコや文鳥が我が家にやってきた。兄は相変わらずで、鳥を頭から口でくわえると、そのまま持ち上げて高い高いして可愛がっていた。しかしどの鳥も皆数か月で死んでしまい、長生きすることはなかっ…

庇の鳩

団地の窓には緑のビニール製の蛇腹で折りたためる半円形の庇が付いている。無くても困ることはないが、雨が強い日に庇を広げるとビニールを打つ雨音が気持ちよかった。庇をたたんでおくと、蛇腹で弛んだ部分に鳩が巣を作ることもあった。 庇は何年も使い続け…

バイオニック・ジェミー

バイオニック・ジェミーのオープニング曲が怖かった。ドラマ自体は美女が活躍するということで毎週楽しみにしていたが、人間を改造することが不気味だったのか、オープニングが流れると緊張した。 兄はカセットテープにオープニングだけ録音すると緊張感を利…

産湯海岸

今週のお題「海の楽しみ」臨海学校で和歌山の産湯海岸に行った。家族旅行の経験もほとんどなかったため、テンションが高く、興奮した小動物のような状態だった。食事も解凍しきれていないマグロに文句を言う生徒がいる中、家で毎日一品料理を食べている私は…

教室

教室ではただぼけーと座っているか、好きな絵をひたすら描いていた。授業中は水のりを固めて遊んだりしてる。宿題はしない。忘れ物はよくする。遅刻はしょっちゅうだ。女の子で廊下に机を出されて勉強させられたり、拳骨で頭を殴られたり、ケツバットされて…

50音アニソン

休みの前の夜、寝てしまうのがもったいなくて眠くなるまで、二段ベッドの下段にいる兄と夜遅くまでアニソンをどれだけ覚えているか交互に言い合う遊びをしていた。ルールは、まず50音順の「あ」から始まる歌詞でどれだけアニソンがあるか交互に歌い合う。出…

かたくり

隣の団地に住む同級生の友人が遊びに来た時、おやつにかたくりを出したことがある。我が家ではしょっちゅう食べているおやつだったが、友人はほとんど食べることなく残した。兄は嫌いで食べなかったが、母と私は甘くてぷるぷるの食感が好きでよく作っては食…

ねこふんじゃった

クラスメイトは団地に住んでいる子が多いが、一軒家の子もいる。 庭におしゃれなテーブルと椅子が置かれたテラスがあり、テラスに面した大きな壁は一面ガラス張りでリビングに光を入れている。リビングにはロッキングチェアやグランドピアノがあった。 この…

トマトのおかず

母はトマトを一つ輪切りにして皿に並べ、とんかつソースをかけたものを一人前のおかずにしていた。我が家の食事は常に一品だった。白米とトマトの輪切りの夕食はどうしても気持ち悪くて箸が進まない。夜12時が過ぎても母は完食するまで寝ることを許さなかっ…