ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

源氏の滝

小学4年生だったか、クラスでも一番勝ち気でリーダーシップをとっていた一人の男の子が、二学期早々机に突っ伏して泣いていた。彼は夏休みに上級生たちと一緒に5、6人で山登りに行った時、クラスメイトが足を滑らせて滝つぼに落ちて亡くなったことを自分のせいだと責めていたのだ。

 

山は遠足でも行ったことのある家族向けの登りやすい山である。細い水が流れ落ちるような滝つぼは浅くて、岩がごろごろあった。上級生の先導で山道を歩いていたというが、上級生と言ってもクラスメイトのお兄さんとかでまだ中学生かそこらだったと思う。

 

夏休み中、隣の団地の友人が、クラスメイトが亡くなり集会所で葬儀があるから一緒に行こうと誘いに来てくれた。何があるのかよくわからないまま行くとクラスのほとんどの子が来ていた。順番に大きな木箱の小窓を覗いていく。私の番が来て小窓を覗くとそこには青白い顔をした子がいた。クラスメイトの男の子だ。しかし「死」がよくわかっていない私は、大勢が集まって何をしているのかがわからなかった。

 

帰りに男の子のお母さんだろうか「今日は来てくれてありがとう」と言い、透明のビニール袋に詰められたお菓子を渡してきた。サイコロキャラメルグッピーラムネ、よっちゃんいかといろんな種類が入っている。なぜお菓子がもらえたのかわからないが、お菓子がもらえて大喜びで帰り、そしてあの青白かったクラスメイトは二学期には元気になって登校すると思っていた。

 

 

悔やんでいた男の子は徐々に元気を取り戻していったが、以前とは少しだけどこか違う。何かが突然変わったことだけはわかった。