ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

母を待たせる

酷く暑い日だった。母をずっと踏切の傍で待たせてしまったことがある。なぜ待たせることになったのか覚えていないが、母は後から家に帰って来ると思い、自分だけ走って先に帰り、冷たい麦茶を飲んでほっと一息ついていた。その後、いつまでたっても帰ってこない母が心配になり、もう一度母と別れた踏切を見に行くと母はまだそこにいた。母は私を待っていたという。これは夢の中の話ではない。

 

私はこんなかんかん照りの中に母をずっと立たせていたのかと思うと辛くて自分が許せなかった。その時の気持ちがいつまでも胸に残っている。当時の私にとって母は自分の存在を認識できる唯一の手がかりだった。