ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

優しい先生

バイト先のパン屋でスイスの自然の美しさと素朴なパンの美味しさに魅了されたあるパン職人に出会う。スイスにパン修行に行くのを夢見てドイツ語を独学で勉強していると聞き、私は気さくなドイツ語の先生がいるからわからないことがあったら教えてくれるかもしれないというとパン職人は喜び、ぜひ教えてほしいという。

 

さっそくドイツ語の先生に依頼のメールをすると、先生からは忙しいしそういった依頼は受けないという返事が来た。私はドイツ語に大して興味がない生徒には勉強は教えられても本気でドイツ語を学びたいと思っている人の依頼は受けられないんですねと、先生はその程度の人だったんですかという返信をした。今考えてもなぜこんな大胆なことができたのか不思議だ。一体私は何様なのか。先生は日時と場所を指定してきて、そこで私も一緒にドイツ語を勉強することになる。

 

先生はパン職人がマッチョな男だと思っていたようだった。実際は二十代半ばの小柄な女性である。事前に質問する内容をきちんとまとめてきた彼女の熱心さに心を打たれた先生は、また気になることがあれば何でも聞いてくれていいと次も約束してくれる。

 

会うこと数回、先生はスイスのどこのパン屋で修業をするのか聞いてきた。 彼女は飛び込みで交渉して教えてもらうつもりだという。すごい度胸だ。すると先生は、スイスに知り合いのパン屋がいるからそこを紹介しようと言ってくれた。彼女も私も大喜びだった。彼女の母親が先生にと炊き込みご飯を詰めてくれたパックを先生が大切に持って帰る後ろ姿を見て、すばらしい先生に巡り合えたことを感謝した。