ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

癖が強い人

 

「初めてで不慣れなところもありますが頑張ります。よろしくお願いします」と言うと「あのなー、ここは不慣れなやつなんか必要ないから!」と、手を振って出て行けの身振り。私の最初の挨拶は歓迎されることはなかった。この冷たい態度の人は、根はいい人らしいが真面目過ぎて癖が強く、この部署では鬼軍曹として名高い。自分に厳しいからか、誤魔化すようなタイプの人を容赦なく追い詰める。何事も納得しないことには先に進まないが、納得したら新しいやり方をひねり出す力をもっている。裸の王様ではない。

 

 

この人を見ていると「水清ければ魚棲まず」を思い出す。しかし誰よりも仕事に情熱をもっていることや嫌われ役をわざと引き受けていることが分かっている人からは、強く支持されていてファンが多い。隅に置けない人である。こんな侍みたいな人がまだいるんだなとびっくりしつつも、なぜか私とは相性がよかったのか、数年後には周囲が認める仲の良い二人となっていた。二年前、大都会に異動していくと、直接かかわることがなくなったが、最後に「辞めたらだめだぞ」と私に言って去っていく。

 

 

今は時どき顔を見せに来てくれる。相変わらず眼光は鋭い。何かを睨みつけて生きているようでありながら、驚くほど繊細で柔軟な部分をもっている。昔、テニスのコーチをしていて、教え方が上手いから指名される程人気があったと聞いたことがある。運動神経が良くて奇跡のバランス感覚で生きている人なのか。とにかく癖が強すぎて目が離せない。