ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

弁当

私が幼稚園に通っている時、母は工場のバスに迎えに来てもらい仕事に行っていた。母の仕事が幼稚園の近くにあったため、私もそのバスに特別に乗せてもらっていた。帰りは二人で長い道のりを歩いて帰る。朝、母と私は待ち合わせ時間にぎりぎりで、よくバスを待たせていた。

 

バスに乗っている人全員が就業時間に遅れることになるため、急いで乗るようにバスから降りて迎えに来てくれる人がいた。よたよたと走っている私の通園バッグを持ってくれる。黄色い通園バッグは園児が持つには非常に重く「うわっ重いね!」と言われた。園児の肩に食い込むくらいカバンが重い原因は、みなしごハッチのアルミ弁当箱にびっちり入れられたご飯のせいである。弁当箱のおかず仕切りを使うことはない。炊き立ての米をこれでもかというくらい、蓋が閉められるかどうかの限界まで詰めて、真ん中に梅干しを一つ押し込んだ弁当、いわゆる日の丸ぎちぎち弁当である。母がご飯を弁当箱に少しずつ押し付けていく姿は今もはっきりと覚えている。最後は盛り上がったご飯を蓋で力いっぱい押して、しっかりとナフキンで包む。弁当箱を立ててもご飯が片寄ることはない。蓋を開けると弁当箱の縁にご飯が潰れてくっつき、ご飯粒は潰れてべっとりしていた。梅干しもご飯も嫌いではなかったが、量が多くて残さないように必死に食べた。他の園児のサンドイッチや海苔のおにぎりがおいしそうで羨ましく「おべんとおべんとうれしいな~」の歌から始まる昼食タイムがいつも恥ずかしくて楽しくなかった。

 

取り分けサンドイッチに憧れていた。弁当箱の蓋を立ててこそこそ食べている間も、向かいの子のカラフルでお洒落な食べ物をちらちら観察する。その時、サンドイッチという名を知らなかった。同じ弁当を作ってもらいたくて拙いワードで母に必死で説明する。そのせいで、たった一度だけパンの日があった。いつもの弁当箱に手でちぎられたスナックパンがびっちり入っていた。茶色一色である。当時、スナックパンは我が家の朝ご飯の定番である。朝に食べた物を昼にも食べるのだ。日の丸ぎちぎち弁当よりも恥ずかしかった。それ以来、パン弁当を望むことはなくなったが、その時食べたスナックパンが腹ペコだったからか、すごくおいしかった。