ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

つきっきりで数える

中学生の時、母が狭心症で入院することになった。原因は煙草である。退院しても子どもを産む前からずっと吸ってきた煙草をやめることはできなかった。私が高校を卒業して資格を取る教室に通うようになった時、また母に狭心症の症状が出たため、以前入院していた病院ではなく、大きな設備の整った厚生年金病院で母を診てもらうことにする。その時、病気は自分自身で治すという考えがなく、病院を変えると病気が治ると思っていた。

 

病院の先生は付き添いで来ている私に母がどれだけ煙草を吸っているか、一日の煙草の本数を確認するようにと、本数を書き込める専用の用紙を渡してきた。仕事や教室がちょうど休みのタイミングを見て一日中つきっきりで母が煙草を吸う度に用紙に書き込んでいく。夜中も5分から10分に1本とハイペースで吸い続けている。専用の用紙は書き込める場所が無くなり、急ぎ紙を継ぎ足してどんどん書き込んでいく。次の診察日に寝ることなくつきっきりで正確に書き留めた用紙を先生に渡すと、先生の顔色が見る見るうちに変わっていき、私に診察室の外に出るようにと指示をする。外でも先生の大きな声が漏れ聞こえる。母はその後、亡くなるまで病院に行くことはなかった。先生は私に新しい病院を紹介すると言ってくれたが、それは精神病院だった。母は自分よりも若い男性に注意されて、また大声で怒鳴られたことで自尊心を傷つけられたのだ。