ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

転がった黄身

 

ビル勤務者向けの共同社員食堂が緊急事態宣言中は全品半額になっている。普段でも格安なのにすごい。そのかわりに黙食をというわけだ。私は基本、昼食は持参の弁当だが、味噌汁、ミニうどん、(今はやっていない)サラダやフルーツバイキングは利用していた。

 

グギャキョゲバアァァ━━•••。聞きなれない大きな音に驚いたが、防衛本能なのかすぐには見ないで、3秒後にちらっと見た。するとラーメンを落としてしまい、呆然としている若い女性がいた。おにぎりでも取ろうとして、先にトレイに乗せていたラーメン鉢に手が当たったのだろうか。

 

器はプラスチックなので割れることはなかった。中にいる店員が「そのままにしておいてください。すぐに片づけます!」と素早い対応をする。幸い熱いつゆで火傷をすることもなく、服も汚れていない様子。彼女は空っぽの器をトレイに乗せて、ふらふらと会計カウンターに並ぶ。

 

私は脳みそみたいにこんもりとしている床に落ちた麺を見て、ひと玉ってけっこう量があるなと思った。つゆと一緒に遠くに飛ばされたチャーシューは無理でも、麺の上にあるチャーシューは自宅だったら食べてる人がいるかもしれない。目玉のように転がった半熟の黄身を見て絶望という言葉がよぎる。

 

これまで生きてきて、ぶちまけた記憶がない。自慢ではないが飲食店で長く働いていた時も皿一枚割ったことがない。もし私がぶちまけて絶望を味わったとしたら、と考えるとそれだけでへこむ。