ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

顔見知り?

 

どれくらい昔から知っているのか、数年前から意識するようになったと言っていいのか。帰宅ラッシュの駅、残業がない日は高確率で遭遇するおばあさんがいる。相変わらず毎回威勢がいい。品のある服装で一見すると裕福でおしゃれな人に見える。不思議なことに、この人はいつも何かに怒っているようで、急に大声を出すため、たびたびどきっとさせられる。

 

 

たまたま、先に見つけておばあさんの後を歩いていると、怒鳴りつけている相手が私と同じ小柄な女性が多いことに気づく。気のせいかもしれないが…。私の顔は覚えられているようで、最近では椅子に座って列車を待っている私の前にわざわざ立ち止まって、大声で怒鳴りつけてくることもあった。顔をじろじろ見てはいけないような気がしてうつむいているので、おばあさんの足元だけが視界に入る。何も言ってこない安全な人を選んでいるのだろうか。

 

 

「これ以上感染者が増えたら許さんからな!」と怒鳴ってきたある日、ふと、おばあさんの顔がどんな顔なのか近くで見てみたくなって、初めて顔を上げて立ち上がり、おばあさんに向かって歩いてみた。

 

 

おばあさんは初めての私の反応に後ずさり、近くの自販機まで行くと、私の顔をちらちらと見ながらカバンの中をごそごそし始めた。その間、私は近くでおばあさんを見つめていた。おばあさんの目は、この時代にはいない目の色、例えるなら干したししゃもみたいな目だった。しばらくすると「300人出てるんだからな!これを見てみろ!」とカバンから新聞紙を取り出して広げて見せてくる。怒鳴ってくるのをやめてほしいという話ができそうにないなと思った。

 

 

おばあさんは下りで私は上りの列車。とりあえず、やってきた上りの列車に乗るとその場を去ることにした。

 

 

 

 

この話は続くのか。

 

ingakouryuu.hatenablog.com