ハットトリック
片方の靴ひもはほどけている
ズボンの後ろのポケットは
裏地が全部見えるほどめくれている
飼っているインコの毛が髪に絡まっている
待ち合わせ場所に現れた彼の姿に
スリーゴールを決められた
仲良くなったきっかけは
彼の靴の上を蟻が歩いていたから
好奇心旺盛にしゃべり続ける
私の話をずっと聴いてくれた
帰り道、交差点で見送る彼に
信号が変わって手を振りながら
気になっていたことを伝える
「髪、切ったんだね」と
すると「今かよ!」と返ってきた
世界に参加する意識が薄い頃
ぬいぐるみ、オルゴール、ガラスの置物
可愛いものは貰い物ばかり
打ち上げ花火のような一瞬の輝きが全てだと思い
もったいないことに別れることしか考えていない
深いようで浅く人と関わってきた
旅の恥は搔き捨てみたいに
旅はこれからも一人で続けたい
そのほうがお互いがよく見えるから