ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

イワツバメ

 

結婚したのも遅かったので子どもがもてなかったとしても二人の間ではそれほど問題ではない。しかし気になることはあった。身軽な私と違い、彼の父方や母方の実家と関わっていく内に恐怖にも似た感覚を覚える。これまで観てきたどんなホラー映画よりも恐ろしい。

 

 

実家の大きな家の下の階には祖父母が、上の階には息子夫婦とその子どもが暮らしている。いずれ両親は下の階に移動して上の階は息子夫婦が使うという流れが暗黙の了解で決まっていた。私はその家の大きな客間に泊まったことがある。こだわりの欄間と立派な掛け軸、歴代の当主の写真が額縁に入れられてずらりと並んでいるのを見ていると息がつまりそうになった。その家の息子は旦那と同じくらいの年齢で当時はまだ独身だった。その後、お見合いで結婚して今年四月には可愛い子どもが誕生している。私はおめでたいというよりも良かったと安堵した。一体何に安堵したのか。

 

 

親戚が多く実家の周囲は同じ苗字の表札ばかりだ。もし私がここに嫁いでいたらと思うと、想像しただけで裸足で逃げ出したくなる。なんという重圧の中で生きているのだろう。家を継ぐ者の重さを考えると、私がどんなに苦労知らずで楽な人生を歩んでいるのかを考えさせられる。

 

 

イワツバメには自ら繁殖しないで子育てを手伝うヘルパーがいる。このヘルパーのおかげで子育ての成功率が高くなるという。人間の子育てにも取り入れてほしい。繁殖していないものも、ヘルパーとしてなんらかの形で子育てに関わっているという新しい概念を、また関われるようなシステムが構築されれば、もう少し息苦しくない世の中になるはずだ。