ingakouryuu’s blog

心象スケッチ

情報量

米穀店から年末にもらうカレンダーは大きな1枚もので8割は絵で埋まっている。絵は毎年いろんなテーマで楽しい世界が描かれていた。乗り物がテーマなら擬人化された多くの動物たちがベビーカーからスペースシャトルまであらゆる乗り物を楽しんでいる様子が緻密に描かれている。動物たちが何に乗って何をしているのか、なぜいろんな動物がいるのか、なぜこの乗り物にこの動物が描かれたのか、疑問が次々と湧いてくる。たくさんの情報が凝縮されたような絵は、幼い頃は処理速度が追いつかないため、いつまでもぼんやりと眺めていた。

 

 

母は音量はゼロでテレビを一日中つけっぱなしにする人だった。眠っている時にそっとテレビを消すが、電源が切れるプツンという微かな音で目を覚ます。そして必ず「見てるのに」と言う。一日のほとんどをごろ寝して、夜に犬の散歩に1時間ほど外に出るだけの生活を何年も続けていた母は、全然眠れないと言っていた。おそらく眠りが浅かったのだろう。老人ホームに入居するぎりぎりまでテレビは何度も買い換えられて、相変わらず音量ゼロでつけっぱなしだった。音を出すと「うるさい!」と言う。母にとってテレビは何かが動いている様子だけを時々眺める気晴らしのようなもので、許容できる範囲の情報だけを取り入れていたようだ。

 

 

団地に取り囲まれた真ん中にある公園では、幼い頃は母と一緒に遊び、兄とはボール投げや自転車の乗り方を教えてもらったりした。母はテレビの音よりも子どもたちの遊び声に耳を傾けていたのかもしれない。

 

 

私は雨音が好きだ。寝る前に雨が降り出すとリラックスして眠れる。雨音には意図がない。だからとてつもなく満たされた気分になる。