究極の一切れ
今週のお題「いい肉」
結婚前、彼に両親を紹介してもらい、その後一緒に焼き肉を食べに行く。焼肉屋は人生2度目である。初対面の人と食事をするのは緊張するが、失礼が無いようにしようと思った。
誰かが焼肉定食を二人前と店がすすめる宮崎牛の他、適当に注文する。まずはナムル、冷ややっこ、サラダ、ご飯などの定食についているものが運ばれて来ると、彼はご飯だけとる。それから次々と肉が運ばれてくる。私が残してはいけないと思い、誰も手をつけようとしない二人前の副菜をご飯と一緒に食べている間、なんと牛肉は全部無くなってしまう。私は食べるのが遅いのだ。
「結構あったな」と言い、満足している彼とその両親が、私に網の端に一切れ残ったよく焼けた宮崎地鶏を最後にどうぞとすすめてくれる。私のたれ皿のたれは油浮きひとつしていない。ついに肉が食べられる喜びで箸を持つ手が震えそうだった。宮崎地鶏がおいし過ぎたのか、副菜で肉を受け入れる準備が整っていたからか、とにかくあれほどうまい肉を食べたのは初めてだった。
帰宅後、彼にそのことを話す。それ以来、彼は私の皿に肉や寿司を取り分けてくれるようになる。
気を遣わせることになった。